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「アジアンタムブルー」 ネタバレ感想

2007.09.03 Mon 18:30

すごく久々に小説を読んだので、感想を。
昨日の夜中に読み終わって、眠いながらも書いたものをアップします。

ネタばれになるので、大丈夫な方のみ↓からどうぞ。


***


「アジアンタムブルー」 大崎善生


つい、30分前に読み終わった本の感想を書こうと思う。
まだまとまりきっていないような気もするけれど、感想って少しずつ消えてしまいそうな気がするから。

印象としては、すごく静かなお話。
久々に寄った図書館で、手ぶらで帰るのが惜しくて、小説の棚をうろうろしてて見つけた小説。
ほんの少し興味を持った、阿部寛の映画の原作だってことに気がついて、借りてきた。
唐突に手にした割には、悪くなかった。
だけど、なんとなくもやもやするものが残るのはなんだろう?

お話は、大きく分けて3つに分かれていて。
主人公「山崎隆二」の彼女「続木葉子」が亡くなったすぐ後の混乱と、生きていた頃の回想、そして混乱後になんとか立ち直っていくところ。

混乱の部分が最初に来ていたから、読んでいくにあたって、物語に入っていくのに少し躊躇いがあった。
主人公は、なかなかの不幸が重なって、「死」に関する辛い経験とか、それに纏わる話が多くて・・・。
死なせてしまった鳥のこととか、高校の先輩に関することだとか、デパートの屋上で会った宏美の旦那のことだとか。
物語を読み進んでいくと、この部分でこんなにも強烈な話を持ってくる必要があったのか、ちょっと謎。
ただの彼女が死んでいくお話、としないための、インパクトを与えるという役割かな・・・とも思ったり。

主人公が、中学生の時に「死」について考えた部分があった。
私にもそういう時期はあったし、多分他の人も持つ経験で、ちょっとしたことからふと脱するんだと思う。
そんな過去のことがちょっと懐かしく思えた。

葉子との生活と死んでいくまでの回想は、さすがに読んでいて苦しくなった。
行ったことないけど、ニースの様子とかを勝手に思い浮かべてみたりもして。
愛が篭った二人のやり取りは、読んでいて心地よいものだった。

少し、ニースへ行くまでの展開が急で、その当たりの心情が物足りないような気もしたり。
病院からニースへの逃亡という、物語のネックとなる部分だと思うのだけど、余命が短いということであっという間。
主人公の気持ちはいいにしても、この時の葉子の葛藤が見たかった気もする。

そう、このお話で物足りなかったのは、葉子がどんな人物であったかという部分。
葉子は、元から静かな性格で会ったことは確かだけれど、物語の中でどうにも男性にとって理想の従順でおしとやかな女性以外の何者でもなかったのが、酷く残念だったと思う。
彼女だって、癌だと聞いたとき相当のショックを受けたはずだし、ニース=死という図式に苦しんだはず。
しかし、そういったものを主人公の推測やちょっとした言葉くらいからしか読み取ることは出来なかった。
水溜りを写真の被写体とするという彼女の特徴のように、彼女の感情との間にワンクッションがあった。
そのおかげで、重いテーマにも関わらずこのお話はさらりとした静かなものになっているとも言えるし、何か物足りない、静かな印象のお話にしかなっていないとも言える。

葉子の死後の、混乱から立ち直りつつある様子は、短い。
人を亡くしたときの哀しみは、まだ私には計り知れないものがあるけれど、少しずつ少しずつ普段の生活に戻っていくものなのかなとも思う。
そして、それは少し悲しいとも思う。

「死」を扱っているからか、どの人も大抵悪くはない人ばかり。
あんまりいない、結構いい人達。
万引きをさせた同級生との再会や、宏美の旦那とその友達とか、変にインパクトだけが強くて、なくても良かったなとも思う。

でも、やはり人は「死」に対して何も成す術がない。
だからか、主人公が万引きしたことも、エロ雑誌の編集者であることも、ユーカがSMの女王であることも、もはやどうでもいい印象を与えた。
肉親が登場しないからか、それとも「死」と状況の性か・・・。
二人以外の皆が皆、一歩距離を置くような傍観者でしかない。

この物語は、やけに静かで、ニースの景色のように美しい。
それが、「死」というテーマを扱う割りに、本質を描いているようで、実はそうではない気がして。
物語というより、やはり他の誰かの死と側にいる誰かの苦しみであって、私も水溜りを覗き込んだ傍観者の一人でしかなかった。
・・・そんなところが、なんだかもやもやと残るのだと思う。

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