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「弘海 息子が海に還る朝」 ネタバレ感想

2005.08.08 Mon 19:55

『弘海 息子が海に還る朝』 市川拓司

市川ワールドな一冊。
ずっと読みたくて・・・ずっとお金がなくて・・・。

とうとう、図書館で借りてきました。

思いっきり、ネタバレ感想なので、↓の「続きを読む」からどうぞ。
(注:伏字してません。)

***



『弘海 息子が海に還る朝』 市川拓司

課題で必要な本を、図書館に予約しに行く前日、ネットで調べたらまだ貸し出し中・・・。
が、しかし、当日やっぱり諦めきれなくて、図書館にて検索をかけたところ発見!
とうとう手にすることができたという感動付のこの本。

一言で言うなら・・・やっぱり市川ワールドでした。(・・・安易)

『Separation』『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞』『そのときは彼によろしく』
私が読んだものとしては今回で5作目のこのお話も、やっぱりファンタジーで、心がキュッと切なくなる温かさを持ったお話でした。
市川ファンのツボをしっかりと捕らえたお話で、妙に安心感を持って読むことができたみたい。

それでも、今までのお話よりも顕著だったのは、「成長」。
今までのお話はどれも、小さな世界の中で、小さな幸せをそっと胸に抱いて生きている人たちが主人公。
それと正反対の「変化」とか「成長」というものが出てきたのは、その二つを欠かすことのできない「子供」が主題だったから。
だから、語り手である父親と、妻の真由美は、息子の成長と旅立ちに戸惑わずにはいられない。

その根本的理由は、弘海が病弱だったから。
父と母が願うのは、立派でなくても大きくなくてもいいから・・・人並みの幸せをと・・・ひどくささやかな幸せ。

『涙よりは笑顔を、溜息よりは歌声を。』

私自身は、やけに弘海の立場に近くて・・・あぁ、きっと自分の父母も、私を見ていてこんな風に思うのだろうな・・・と、感じてしまったり。
有名人になったり、有名学校に入ったり、そんなことのできる水準には到底届かなくて・・・。
それよりももっともっとささやかな物さえも、手に入れることが難しい人がいるということを、理解できる人はどれくらいいるのだろう?
そして、その事実は決して、不幸なこととイコールで結ばれないということも。

物語の進み方は、少し面白い感じ。
現在進行形と手紙の中、それと弘海の旅立ちの過程。
この三つが順番に繰り返されて、少し混乱しなくもないけれど、そのせいでどんどんとページが進む。

一方で、現在進行形の父親の語りが、やや悲観的過ぎる気もしないでもない。
もちろん、水の中に適応しやすい能力は普通では存在しないものだけれど・・・。
遠い寮に預けたと思えば、それほどショックもないような・・・。
まぁ、要は、不思議な能力を持った息子が、行った先で全然違う人になってしまうような不安を、ささやかな夢を抱く者としては拭い去れないのだということだけれど。

そして、市川ワールドのお決まりの登場物達に、くすっと笑いたくなったり。
『いま、会いにゆきます』の話の中で出てきた、ペンギンとか。
市川さんの奥さんの職業で、『Separation』で出てきたようなフィットネスクラブとか。
その他、外国文学をよく読むということで、『アトムの子ら』とかと、話の中に話を埋め込むようにして織り成しているところがすごい。

若干、弘海の能力や里沙との絡みが薄かったような気もする。
弘海が、なぜそこまで簡単に自分の能力を受け入れていたのかなど、もう少し彼の日記が登場していてもよかったのになぁなんて。
でも、それこそ最初の流れだけ読むと、弘海が難病で命を落としたように捉えられなくもない。
その辺りが、少し消化不良。
一年後の弘海の成長も気にならないといったら嘘になるし。
いくら南の島だろうが、今の時代電話やメールで連絡の手段なんていくらでもあるんだし・・・。

一定の市川ワールドを辿りつつ、新境地を探して、少し軽めなお話だった印象。
ただ、零れるほどの愛情が読んでいて心地よくて、水の中に身を浸すような穏やかさを感じることができるほどに、父親の語りが暖かかった。
それを考えれば、やっぱりもう一度ページを開きたくなってしまうんだよね。

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